第3章 夢と現
(ん、朝か…)
天守の襖からは朝陽と気持ちのよい風が入り込む。
『ふふふっ。』
こうやって、愛する人の温もりを感じ迎える朝は、何度目だろう。
何度迎えても初めてのように新鮮で胸が高まる。
そんな事を考えて、寝返りをすると信長と目が合った。
「起きて、いたのですか?」
『あぁ、何を考えてた?』
「幸せだなって。安土の朝を何度迎えても、どきどきさせます。」
『では、心の臓がもたぬな。この朝は永遠なのだから。』
「そうですね。ふふっ」
二人は視線を絡ませ、褥へ潜っていった。
※※※
軍議の後は、光秀の指南が昼まで続いた。
文句は言いつつも、へこたれずに大名の動きや名前を覚え、いつのまにか光秀との話にもついていくことが出来るようになっていった。
『だいぶ、わかってきたようだな。』
「でも、まだまだです。」
『お披露目の式くらいには、これで十分だろう。』
「じゃあ、指南は終わりですか?」
『馬鹿を言うな。この機会に、政と世の理を学べとのご指示だ。』
「へぇー。」
『お飾りの正室にはなりたくないだろう?』
「そうですけど、…。ふぅ。信長様と並んで生きていくためですもんね。仕方ないです。」
『意気込みだけは認めてやる。』
光秀は、にやりと笑うとあさひの頬を撫でた。
※※※※※
「お腹すいたぁー」
いつもの様に、昼げを摂る為に六人の武将とあさひが集まった。
『光秀が、お前の頑張りを誉めていたぞ。今日は、ご褒美にお前の好きなものを作った。』
政宗が優しく微笑んだ。
豆ご飯、汁物、煮物、あさひの好物がお膳に並ぶ。
『この後、甘味もあるからな。』
「嬉しい!政宗ありがとう。 でも、こんなに美味しいものばかりだと、太っちゃうよ。」
『はぁ? あんた、風邪引きやすかったりするんだから、もっと食べなきゃダメだよ。』
『そうだぞ、あさひ。お前は痩せすぎだ。』
「家康も秀吉さんも、そんなこち言うけど、私のいた時代は、痩せてる女性がきれいってされてたの!」
『でもなぁ…』
『痩せていたら子は産めぬぞ。』
『光秀さん、子は、って!』
『信長様の正室になれば、いずれ身籠り子を産むのは必然であろう。』
『子を産む…、この華奢な体でそんな事ができるのでしょうか? 壊れそうなこの体で…』