第1章 戦いの後
悪夢のような日だった。
傷ついた隊士達がここに運ばれることは鴉の知らせで知っていたから、きっちり準備もしていた。
しのぶ様なき今、私が一番の年長者だからと覚悟も決めていた。
けれど次々と運ばれてくる人達を見て、その血の匂いを嗅いで、何度泣きそうになっただろうか。
「お願い、生きて!目を覚ましてください!」
すでに息絶えている人もいた。
治療を施しても間に合わなかった人もいた。
五体満足の人なんて本当に僅かで。
救える人はもっと少なかった。
「無惨はもういないのに、、、これから生きなくてどうするんですか!?」
怒りさえ覚える自分の無力さ。
それでも私が泣いてはいけない。
しのぶ様がいてくれたら。
カナヲがいてくれたら。
もっと救えるのだろうか。
落ちこぼれの私だから救えないのではないか。
何度も足元から崩れ落ちそうになった。
だけどその度にまだ彼らが生きて帰ってくるはずだからと、踏ん張って待ち続けた。
彼らが帰ってこないうちに私が倒れるわけにはいかなかった。
鴉の知らせで彼らの死を告げるものはなかった。
つまりそれは、少なくとも彼らは今生きているということ。
彼らがいつか帰ってくるということ。
それだけが唯一の希望だった。
彼らが帰って来た時に、最善の治療をすること。
それが私の任務。
隊士でありながら命を張っていない私の最低限。
それをしないで倒れるわけにはいかない。
彼らにはそれくらいでは返せないくらいの恩がある。
どうか無事に、早く帰ってきて。
その夜はとても長く感じた。