第2章 帰郷
「、、、あなたの家族?」
カナエ様は眉をひそめて聞いた。
私は黙って頷いた。
「あなた、あれを見たの?」
あれ、というのは、あの異形のことだろうか。
静かに頷いた私にカナエ様は教えてくれた。
あれは鬼というものだということ。
最近この辺りの村で人が襲われる事件が多発していて、自分はそれを追いかけてきたこと。
そして昨晩、その鬼を退治したが、鬼の様子からすでに誰かを襲った後だったこと。
「ごめんなさい。間に合わなくて」
カナエ様は膝をついて私に謝った。
涙が溢れた。
何を言っただろう。
半狂乱になった私は、カナエ様を責めた。
きった酷い言葉も使った。
どうして、どうしてと同じことを何度繰り返しただろう。
カナエ様は私を抱きしめて、ただずっと私の言葉を聞いてくれた。
私は泣き疲れて、気がつくとカナエ様の、この蝶屋敷にいた。
「姉さん!起きたわ!」
目の前には眉間に皺を寄せたしのぶ様がいた。
「あら!良かったー」
サッと現れたカナエ様。
突然の状況に困惑する私にカナエ様は笑って言った。
「ごめんなさいね。私の腕を掴んだまま気持ちよさそうに寝ていたから。近所の方たちに聞いたら、あなた身寄りが無いと言うし、一応一言だけ言って連れてきてしまったの」
「まったく姉さんは、勝手なことを、、、」
「ねぇ、あなたさえ良ければ、ここに住まない?もちろん帰りたかったら送っていくけど、、、」
「って言ってるそばから、また勝手なことを!!」
「あら、いいじゃない。皆で暮らしたらきっと楽しいわよ!アオイは可愛いし」
「楽しいとか可愛いとかそういうことじゃないんだけど!」
2人のやり取りに圧倒されていた。
どうしてこの人達はこんなに楽しそうなんだろう。
どうしてあんなことの後で、こんなに笑えるんだろう。
「ね、アオイ?あなたはどうしたい?」
くりっとした瞳に見つめられる。
どうしてこんな私にそんな事を聞いてくれるのだろう。
「私、何もできませんけど、、、」
「あら!そんなの私達も一緒よ!私はお掃除できないし、しのぶは料理がねぇ〜」
「で!できるわよ!料理くらい!」
「えー?この間、おにぎりにお砂糖を入れたのは誰だっけ?」
「そ!それは、塩と砂糖が似ているのが悪いのよ!!」
「まぁー」