第1章 戦いの後
「くっそ、ワケがわからねぇ」
終わりの見えない紋逸との問答を途中で切り上げて、俺は外の風に当たることにした。
「あーイライラすんぜ」
何でアオイが虐められたことが俺のせいになるのか、結局分からないままだ。
隊服より着物が良いってのもよく分からなかった。
「隊服は動きやすいだろーが」
俺は自分の履いている服を眺めた。丈夫だし、着心地も悪くない。
上半身に何も身につけないのも、この方が楽だからだ。
「首の辺りとか窮屈じゃねぇのか?アイツらは」
ほら、この方が夜風が通って気持ちが良いだろーが。
俺は鼻から冷たく清々しい風を思いっきり吸って、廊下を曲がった。
すると、その先の縁側にアオイが腰掛けていた。
「あ゛!!」
「きゃ!」
思わず出た声にアオイの肩が跳ねる。
「な、なんだ、伊之助さんですか、、、」
アオイがホッとしたように呟いた。
「、、、」
けど何か様子がおかしい。
俺はアオイに近づいてその顔をよく見た。
「わっ!あの、、、」
「、、、」
目が赤い。それにさっきから鼻声だ。
もしかして、コイツ、、、
「お前、泣いてんのか?」
月明かりが濡れている瞳に反射する。
間違いない。アオイはここで泣いてたんだ。
「なっ!泣いてなんかいません。何言ってるんですか」
アオイはそう言って顔を隠すように背ける。
だが俺はその肩を掴んで無理矢理にこちらを向けさせた。
「痛っ」
「夕方のことか!?」
アオイの小さな悲鳴と俺の声が重る。
アオイの大きな瞳が動くのをやめた。
「夕方?」
「虐められただろ?そのせいか!?」
「え?え?」
紋逸の言葉は半信半疑だった。アイツはいつも大袈裟に言う。
だが、今まさに目の前でアオイが泣いているのを見てしまった。
「何でちゃんと辛いって言わなかった?こんなとこで1人で泣いてんなよ!」
アオイの肩を揺さぶる。
確かにあの時もコイツの目に涙が見えた。だけどその後すぐに楽しそうに笑ったから、大丈夫だと思ってたんだ。
「虐められたのは俺のせいなんだろ?何で怒らねぇ!お前のせいだってもっとちゃんと言えよ!そうじゃないと分からねェだろ!?」
あの時、ありがとう、なんて、何で俺に言ったんだよ。
「俺がこんなだからだろ?俺がテメェに隊服に着替えろなんて言ったから」