第1章 戦いの後
「禰豆子ちゃあああん!!!」
屋敷中に響き渡る叫び。
病室の前まで行くと思わず耳を塞いだ。
「善逸さんっ!目が覚められたんですねっ!」
禰豆子さんに抱きつき泣き叫ぶ善逸さんに、できる限り大きな声で話しかける。
「アァーー!もしかしてずっと看病してくれてたの!?飯も食わずに!?夜も寝ずに!!?結婚しちゃう!?」
「体調は如何ですかっっ!!」
「痛かったよぉぉぉ!怖かったよぉぉ!でも俺頑張ったんだよぉぉぉ!」
「お食事は取れそうですかっっ!!!」
ダメだ、、、聞いてない。
ちょっとしたパニックで禰豆子さんのことしか見えてないんだ。
「身体動かないしぃ、食事だって喉を通らないかもしれないから、ここは禰豆子ちゃんの口移しで、、、って、ギャンッッ!!!」
心が折れて溜息を吐いた時、伊之助さんが善逸さんの頭を叩いた。というよりも、、、今、思い切り殴った、、、?
「痛ーーーーい!!!何すんだよ!誰だよ!?」
「い、伊之助さん!何を!」
「ウルセェ、クソ紋逸がっ!!アオイが喋ってんだろ!ちゃんと聞け、馬鹿!!」
アオイが、そう名前を呼ばれて一瞬だけ胸が跳ねる。
「へっ?伊之助?何で?ってか、アオイさん、皆も?」
善逸さんは伊之助さんの一撃で正気を取り戻したらしい。
とりあえず大丈夫そうな様子にホッと息をついた。
「あの伊之助さん、ありがとうございます」
「フン」
隣に立つ伊之助さんにこっそりと礼を言ったが、彼は鼻から息を吐いてそっぽを向き、善逸さんの所へ行ってしまった。
以前なら善逸さんと一緒になって人の話を聞かなかった彼が、「アオイが喋ってんだろ!」なんて、先ほどの会話と相まって少しだけ近づけたと思ったのに。
「気のせいだったかな、、、」
何でだろう。胸がモヤモヤした。
「アオイさん、何か仰りましたか?」
心の声が外に出ていたらしい。
キヨが心配そうにこちらを見上げていた。
私は慌てて手を振った。
「ううん!何でもない何でもない!」
「そうですか?」
「そうよ!さっ、早く夕飯の準備をしなくちゃ!うるさい人が起きたから、忙しくなるわよ!」
「はい!頑張ります!」
その後は自分の言葉通り、薬が嫌だと暴れる善逸さんの相手で手一杯で、伊之助さんとは話す機会もないまま、あの言葉の真意を聞くことはできなかった。