第1章 戦いの後
「そっか。皆、アオイさんがやってくれたんだ」
包帯で全身を巻かれた紋逸がベッドの上で呟いた。
さっきまでギャーギャーとうるさかったが、やっと事の顛末を話すことができた。
「、、、しのぶさん、もう居ないんだもんな、、、他にも沢山。色んな人がもう居ない」
俯く紋逸。
「鬼殺隊も解散ね。まぁ、そうだよな、目的は達したんだしな」
「、、、」
「俺達、これから何をしていくんだろう」
「、、、知るか、ボケ」
これから?
これからって何だ。
まだ、しのぶが居ないことも、自分がここに居ることも信じられないでいるのに。
シュンと沈んだ紋逸の言葉に、やっとのことで悪態を絞り出した。
「この屋敷も無くなっちゃうのかな」
気がついてしまわないようにしていないと、まだこの屋敷のそこかしこに、しのぶの気配を感じるのに。
沢山の、ホワホワと光る思い出は今もこんなに鮮明なのに。
「そんなのって何か寂しいよな」
「、、、」
寂しい。
そうか、この感じは寂しいというのか。
しのぶが居なくなってしまったこと。
炎のオッサンの時とはまた違う。あの時は成し遂げなければならないことが多すぎて、そんな時間さえなかった。
けれど今、ゆっくりと流れるように実感させられる自分の中にポッカリと空いてしまった何か。
鬼殺隊に入ったのも、初めは、ただの力比べだった。
自分がこの世界でどの位置にいるのか。それを試すことは山では重要なことだと教えられたから。
山では強い者は弱い者に何をしてもいいと教えられたから。
弱い者、居なくなってしまった者のことなんて考えたこともなかった。
「死んだら土になるだけ」
かつての俺はそう言った。それは今でもそうだと思う。
けれど、この戦いの中で土になってしまった人達のことを俺はきっとこの先も忘れることなんかできない。
そしてそんな穴が空いたまま、俺は一体何を目指して、どこに行けばいいのか。
俺はこの先、何をすればいいのか分からない。
こんなことは初めてで。
「もう喋んな。テメェと話してると気が滅入る」
そうやって紋逸の言葉から、逃げることしかできなかった。