第1章 戦いの後
帰り道、伊之助さんは無口なまま少し前を歩いていた。
まだ腹の虫が収まらないのだろうか?
それとも夕飯の心配をしているのだろうか?
猪頭のせいでその表情は相変わらず分からない。
「伊之、、、」
話しかけようとして思い出す。
伊之助さんの言葉。
「ずっとアオイの方が綺麗だろうが!!!」
あの時の状況も声も鮮明に頭に残っていた。
そして思い出すと、何故だか話しかけることができなくなった。
心臓、、、痛いかも。
私は肩を叩こうとしていた手をそっと引っ込めた。
トボトボと歩きながら沈みかけた夕日に照らされた、その背中をボーッと眺める。
寒く、ないんだろうか。
あれは、、、そういう意味でいいんだろうか。
だって相手はあの伊之助さんだ。
もしかすると、化粧というものを知らなくて、顔に何も塗ってないから綺麗=清潔っぽいと言っただけかもしれない。
んー、、、
あの時はつい喜んでしまったけれど、あり得てしまう、、、。
秋も深まって肌寒いのに、未だ上半身裸でいる背中にふと不安を覚えた。
聞いてもいいだろうか。
「どう言う意味だったのですか?」
そう聞いたら、どう答えるのだろうか。
どんな顔をするだろうか。
私はその答えを聞いて、どう思うんだろうか。
気がつくと屋敷の近くまで来ていた。
聞くなら今しかない。
そう思い、再びその肩に手を伸ばしかけたとき、
「ギャアァアァ!!」
屋敷の方から懐かしい叫び声が聞こえてきた。
「!」
「この声、、、!!」
伊之助さんと目を合わせて、急いで屋敷へと走る。
「ア、アオイさんーーー!」
私達の姿を見つけるや否や、3人組が泣きそうな顔で走り寄ってきた。
「ぜ、善逸さんが目を覚まされて、、、!」
やっぱり!!
「だけどだけどっ、その時たまたま禰豆子さんが目の前にいてっ」
「善逸さん、動けるはずがないのに暴れてるんです〜っ!!」
「はぁ、、、?」
大体の想像は付いたが、
私達は急いで病室へと向かった。