第1章 戦いの後
「よし、いつも通り!」
顔を洗って鏡を見る。
大丈夫、これなら誰かに気付かれることもないだろう。
「それにしても、私なんで、、、」
鏡にうつる自分の顔に問いかけた。
しのぶ様には似ても似つかない地味な顔。
「ふふ」
試しにしのぶ様みたいに笑ってみたけど、溜息が出るほど似合わない。
というか、ん?よく見たら眉間のこれは、まさか皺?
「や、やだやだ。伸びろ、伸びろ」
必死で眉間の皺を伸ばしている時、ガシャン!という音とともに騒がしい声が聞こえた。
慌てて声のする方へ走る。
まさか、まさか、、、!!
自分で聞こえるほど心臓の音が大きくなる。
廊下の突き当たりを曲がると、ひとりでに足が止まった。
「あ、、、!」
、、やっと、目が覚めたんだ、、、
動けるはずのない包帯だらけの身体で、きよ達に掴みかかる後ろ姿。肩にかかる黒髪が落ち着きなく揺れる。
久しぶりの濁声に目を見開いた。
「あっ!お前ら!!なぁ、他の人たちは!?権八郎は!?カナヲは!?今どこにいる!??」
「あっ!あの!!」
「あわ、伊之助さん、、、!!」
「ちょっと落ち着いて下さいー!!」
きよ達の涙声に我に帰る。
余韻に浸っているヒマはないと溜息をついた。
「は、、、?何で泣いてんだよ、まさか、、、」
馬鹿なことを言ってワナワナと震えだした背中に吹き出しそうになるのを必死でこらえて、カツカツと近づき、その頭を軽く叩いた。
「ッテ!!」
「まったく、あなたという人は!1か月ぶりに目が覚めたと思ったら何ですか」
少しだけ自分の声が勢いづいているような気がするのは、きっと気のせいだ。
「、、、」
キョトンとしている大きな瞳。
本当にこの人ときたら、顔だけは綺麗なんだから。
ずっと猪頭をかぶっていてくれた方が心臓にいいのに、、、。