第1章 戦いの後
その綺麗な瞳と目が合って、怖気付きそうになるのを堪えて言葉を続けた。
「このコ達はあなたの剣幕に驚いて泣いているのです!炭治郎さんも善逸さんもまだ起きてはいませんが、今のところ容態は落ち着いていますよ!」
「、、、。」
何も言わない伊之助さんは私を見たまま固まっている。
ダメだ、なんか後ろに下がりたくなってきた、、、
だけど、、、負けられない!
「カナヲも別室にいます。というかそんな傷で動いたら、、、って、あの!?」
ほんの一瞬の出来事だった。
傷ついた身体で無茶をする彼にお説教の1つでもと言おうとしたのに、気がつくと私は伊之助さんの腕の中にいた。
え、、、?
伊之助さんのハネた黒髪が鼻をくすぐる。
頬に触れるのは彼の首筋。
回された腕にギュッと力が込められる。
その力強さに我に返った。
「アオイ、、、みんな、、、ゴメン」
「な、ななな何ですか、急に!」
私は傷のことも忘れて暴れたが、その太い腕はビクともしない。
顔が熱くて心臓が爆発しそうだ。
きよ達が何か声をかけてくれているのが耳に入ってこなかった。
「俺、、、弱くてごめん。守れなくてごめん」
そんな私の耳元で彼が言う。
私は暴れるのをやめた。
爆発しそうだった胸がゆっくりと鈍く痛む。
、、、この人は謝ってばかりだ。
分かっている。守れなかったと言っているのはきっと、しのぶ様のことだと。
だけど
「、、、弱くなんてないです。ちゃんと守ってくれたじゃないですか」
無事に帰ってきてくれた。
そのことがどれだけ私は嬉しかったか。
「無事に帰ってきてくれたじゃないですか。それだけで十分です」
この小指と結んだ約束を果たして、目を覚ましてくれた。
そのことにどれだけ私が励まされたか。
ずっと不安だった。
このまま4人とも目覚めなかったらどうしようかと。
しのぶ様ならどうするのかと。
この温かい感触がこんなに勇気をくれるのに。
早くいつものように騒がしい元気な声を聞かせてほしいのに。
「だからもう、謝らないで下さい。そんな顔見たくないですよ」
この人はどうして気付かないんだろう。
謝られる度に、その涙を見る度に私の胸はこんなに痛いのに。
笑ってくれたらこれほど嬉しいことはないのに。
彼は私の肩を涙で濡らした。