第1章 戦いの後
カナヲと炭治郎さんの看病は、禰豆子さんが主にしてくれた。
私は善逸さんと伊之助さんの看病に当たった。
4人とも酷い怪我だったが、1ヶ月してやっと容体が落ち着いてきたところだ。
「ふー、、、」
部屋の窓を開けて、花の水を入れ替える。
善逸さんの寝息がいつも通りなことを確認して、伊之助さんを見た。
綺麗な顔。
そしてその長いまつ毛の間に今日も浮かぶ雫。
「ごめん、、、」
彼はいつも寝言で謝っていた。
彼が誰に謝っているのかは分からない。
あの戦いで一体何があったのか、私には知る術もない。
ただ伊之助さんがものすごく自分を責めていることだけは確かだった。
「あなたがそんな風に思うことはないじゃないですか、、、」
そう言ってポケットに入れてあるハンカチで彼の涙を拭く。
けれどきっとまた明日、傷ついた身体で彼は泣いて謝るのだ。
「謝らないといけないのは私の方です」
しのぶ様に、傷ついた皆に謝らなくてはならないのは、隊士でありながら戦えない私の方だ。
こんな傷で彼が自分を責める理由などあるはずがない。
「あなたのおかげで救われた人はたくさんいるはずです」
私も。
それにきっと、しのぶ様だって、、、
そう言おうとしたとき。
「しのぶ、、、一緒に帰ろう、、、」
「え、、、?」
彼がしのぶ様の名前を呼んだ声が、やけに鮮明に耳に入った。
そして気がついた。
そうか。あの時の「ただいま」は私ではなく、しのぶ様に言ったんだ。
彼が帰ってきたかったのは私ではなく、しのぶ様がいるこの場所だったんだ、、、。
って!!
私ったら何を当たり前なことを、、、!
ここは元から、しのぶ様の屋敷じゃない。
私はただの助手で。隊士としても弱くて、何の役にも立たない。
今だってしのぶ様の代理で彼らの治療をしているだけ。
「そんなの視界に入らなくて、当然じゃない、、、」
そんなこと分かっていた。
なのにどうして私の胸は痛いんだろう。
痛くてちょっと泣きそう、、、だなんて。
「、、、こんなのおかしいですよね、まったく情けない」
私は瞬きすると落ちそうになる雫を必死で抑えて、立ち上がった。
きっと疲れているだけだ。
「、、、顔、洗ってきます」
私はハンカチを彼の枕元に置いたままであることも忘れて、その部屋を出た。