第4章 気まぐれエンカウンター!【フロイド裏夢】
次の日の朝、妹は兄の部屋を訪ねた。
昨日の夕飯のリンゴ粥の中身はまだ半分残っていて、兄は起きていた。
『お兄ちゃん…おはよう』
「あぁ、おはよう…ごほっ…げほ…」
『…具合、まだ良くならないね』
妹は食器を下げて、兄の額に冷たいタオルを乗せる
「まあな、昨日よりしんどい…なぁ、お前」
『何?』
「…何でもない、いつもありがとうな」
『何言ってんの?変なお兄ちゃん…』
妹はお大事にと一言残して部屋を出て仕事へ向かう。
兄は妹が出て行ったのを確認して掛け布団に顔を押し付ける
「…俺の代わりに、ナイトレイブンカレッジに入学してくれって言うのは我儘だよな」
本当は俺が行きたかった、こんな流行病が無ければ普通に学園生活を謳歌したかった…
でも、健康体な妹が学校へ行かずいろんな楽しい事を我慢してるのにこんなわがままを言って良いのかと躊躇してしまう。
「っごほ…げほ、ごほ…!」
手を当てて咳き込むと、手のひらが真っ赤になった。
吐血だ。
自分がもう長くない事を悟った兄は我儘でも何でも良い、妹の幸せを願い便箋と羽ペンを取り出して筆を走らせた。
そして、最後の力を振り絞ってユニーク魔法を使った。
「《屈強なる戦士よ、鎧を脱ぎ捨て剣を収めよ、今こそ己の心に安らぎをもたらす時!》紳士から淑女へ(フロム・ジェントルメン・トゥ・レディース)」
光に包まれた身体は兄の体を男の体から女の体へと変化させた
これで良い、これで妹を守れる…
兄は妹の居ない殺風景な自室で静かに、眠る様に息を引き取った。
しばらくして妹が家に帰ってきた。
そして兄の部屋を訪れた時、ベッドの下には便箋と羽ペンが転がっていて妹はそれを見る事なく近くのローテーブルに置いた。
『ただいま〜』
そこにはユニーク魔法をかけたまま眠る兄の姿があった。
いつもなら起きてる時間なのに、眠っている兄の掛け布団を直そうとした時だった…
『……お兄ちゃん?』