第3章 求愛エモーショナルチェンジ!【ケイト甘夢】
昼休み、食堂はいつも通り混んでいる。
教師は自室か職員室で昼食を取ることが多いのだが、私は料理が面倒でいつも食堂を利用する。
この学校の食堂は安くて美味しいからというのもあるのだが。
大好きなオムレツを取って空いている席を探すと、「ちゃんセンセー」と呼ぶ声があった。
もしかしなくてもこれはケイトだ。
オレの隣おいでよ。
人の良い笑みを浮かべている。
周りに空いている席は見つからず、仕方なしにケイトの隣に腰を下ろした。
向かいに座るトレイは苦笑している。
「すみません」
いつもケイトが、という副音声が聞こえるのが少しおかしい。
保護者かよ、同い年でしょうに。
「席なかったからね。
...生徒に敬語使われるの、すごく新鮮で嬉しい」
「はは、そうですか?」
ケイトを始め、この学園では教師に敬語を使う生徒は珍しい。
いや、クルーウェル先生やトレイン先生には使っているから、ただ単に私が舐められているだけなのだろうか。
敬語は使っていても慇懃無礼という言葉がぴったりの生徒もいるし、あろうことか教師に命令してくるハタチもいる。留年してるくせに。
私が比較的生徒たちと年齢が近いからなのかもしれないが、だからこそ敬語を使われるのは嬉しくなってしまうのだ。
しかし、ケイトはそうではなかったらしい。
「オレがいるのにオレ以外の男の言葉で喜ぶとか…は〜ぁ、ちゃんセンセーを喜ばせるのはオレの特権なのに」
もー、なんてケイトは口を尖らせる。
「他の男ったってねえ」
男という以前に私から見るとトレイもケイトも生徒なのだ。
「だって、ちゃんセンセーは将来オレのお嫁さんじゃん」
ね☆なんてケイトはウインクする。
それが様になっていてなんだか悔しい。やめてよ、と言うとトレイはまたはははと笑った。
「そういうのは、二人きりでやってくれないか」
「いやいやそっちの方がマズいんだけど!?」
私の必死な様子が面白かったのか、はは、とトレイは笑いを漏らす。