第1章 灼熱サンシャイン!【カリム・アルアジーム/切甘】
はのろのろと起き上がり『帰ろ…』と力ない声で呟い出口へと歩き出す。
歩き出した足は前に進もうにも上手く進んでくれなくて、何度拭っても視界は涙でぼやけて見えづらい。
あれほど大好きだったカリムの豹変ぶりはを地獄に叩き落とすには充分すぎるほどのショックだった。
自室についたは布団の中にうずくまり、真っ暗な部屋の中ただひたすら声が枯れ、寝食を忘れるくらい泣き続けた。
そんな日々が3日間続いた頃もうは声を上げて泣きたくても殆ど声は出なくなっていて喉が渇きすぎて脱水症状に陥り、空腹も限界だった。
グゥゥゥウ…
地響きの如くなるお腹の音は皮肉にもカリムと出会ったときの自分を思い出させる。
あの時も喉が渇いていてお腹が減っていた。
あの時カリム様がユニーク魔法で出してくれたお水は本当に美味しかった。そしてそのあとに食べた食事も…
奴隷時代どんなに喉が渇いていてもお腹が減っていても我慢はできた。
でも、ここ1年ほどアジーム家のお屋敷にいたはそんな奴隷時代の我慢なんて忘れてしまっていた。
アジーム家の生活に慣れ過ぎた自分の身体に対してはやり場のないモヤモヤを抱えていた。
『カリム様…』
泣き疲れてしゃがれた声で名前を呼ぶたびに優しいカリムの顔が浮かんでは消えて冷酷なカリムの顔が浮かぶ。
その度にカリムに蹴られたお腹がキリキリと痛む。
は自分のお腹を守るようにグッと身体を丸めた
もう居ないんだ…
私の大好きだったカリム様はもう…この1年のうちに別人になってしまわれたのだ。
現実を受け入れたくても受け入れられないは胃液しか出ないのに吐き気を催しベッドの上で胃液を吐き出す。
『っ…う"っ、う"ぇえ…ぐっ…ぅう…!』
はぁはぁと息を荒げながらも近くにあったティッシュを手に取り
吐き出したそれを力なく拭う。
何をやっているんだろう…
この何の生産性もない行動に何度目かのため息を吐く。
会えない時間が拷問のように感じたから会いたくてここまで来た
なのに、会ってからの方がもっと酷い拷問だった。