第1章 灼熱サンシャイン!【カリム・アルアジーム/切甘】
カリムがナイトレイブンカレッジへ入学してから一年。
またナイトレイブンカレッジ入学の季節が巡ってきた。
「今年はうちの使用人のジル・アギーラがナイトレイブンカレッジへ入学するんですって」
「ジルくんが?まぁ彼は魔法薬学の天才だから当然よね」
「ジルがどんな魔法士になるか楽しみだなぁ〜」
お屋敷を掃除する使用人達の世間話を聞きながら黙々とも掃除に励む
自分の持ち場が終わってはカリムの部屋へ向かう
カリムが居なくなってからも毎日はカリムの部屋を掃除している
この一年で一度も帰らない主がいつ帰ってきても良いように…
健気に掃除をして主の帰りを待っているのだ
『ホリデーには帰ってくると、おっしゃっていたではありませんか…カリム様。何故一度も帰ってきてくださらないのですか?』
手紙はたまに絨毯が届けてくれるが会えないのはやはり辛い
『カリム様…私は貴方と出会ったせいで、とても泣き虫になりました。貴方と離れてる時間が今まで受けたどんな拷問よりも辛いです』
コンコン
扉をノックする音が聞こえてはもしかしてカリムが帰ってきた?とあるはずの無い淡い期待を抱きつつ扉を開ける
「さん…ですよね?僕はジル・アギーラです。今少しお話しをさせていただいてもよろしいですか?」
『はい』
ジルはカリムの部屋に入り、ソファーに腰掛ける。
「実はさんにお願いしたいことがあり、お伺いしました」
『私に?』
「今夜僕の代わりにナイトレイブンカレッジ行きの馬車に乗ってください。」
『えっ…』
にとっては願ってもない提案。
しかし、の顔は少し曇る
『…何故、私にそのお願いをするのですか?』
「一年前のカリム様のお見送りの時僕は貴方を見てました。
貴方は言葉には出さないけれどいつもカリム様を想っていて、貴方のカリム様への想いに僕は心打たれました。
だから僕は、今宵馬車に乗り込むべきは僕じゃなく貴方だと思ってます。」
は開いた口が塞がらなかった
自分の事を見てくれてる人がいてナイトレイブンカレッジ入学と言う魔法士にとって最大のチャンスを譲ってくれる人がいるだなんて思ってなかったからだ。
『でも、アギーラさんは本当にそれで良いのですか?』