第1章 灼熱サンシャイン!【カリム・アルアジーム/切甘】
結局は一睡もできないまま朝を迎えて淡々と仕事をこなした。
仕事中は何も考えなくて済む、だがその代償として時間の流れはとても早く感じるもので
カリムが旅立つ時間が刻一刻と迫るごとにはどうしようもない寂しさを覚えた。
カリム様にとってナイトレイブンカレッジ入学はとても喜ばしいことなのになんで私は…
窓を掃除しながらの頬に涙が伝う。
ダメだ、泣いちゃダメだ。
泣いたらカリム様を困らせてしまう。
今日が最後なんだ!笑って送り出さなきゃ…
ゴシゴシと袖で乱暴に涙を拭う。
すると誰かが後ろからの肩をトントンと叩く
『誰です?』
が後ろを振り向くとそこには魔法の絨毯がいた。
『絨毯!どうしてここに?』
絨毯はを乗せて窓の鍵を器用に開けて屋敷を飛び出した。
『ちょっ!絨毯戻って!私まだ仕事中っ!!』
絨毯は街中をアクロバティックに飛び回り、宙返りまでして見せた。
『わわっ!危ない!落ちる落ちる!!』
ひとしきり絶叫マシンのような動きをした後、昨日の夜行った海まで連れてきてくれた。
『はぁ…はぁ…死ぬかと思った。』
絨毯はフサフサをくるくる回してご機嫌アピールをした。
『…私が元気なかったから励まそうとしてこんなことしたの?』
絨毯にそう聞くと頷くようにフサフサが動いた。
『そっか、ごめんね気を使わせちゃって…ありがとうね。
ねぇ絨毯…聞いて?
昨日は貴方の上で私聞き分けの良いフリをしたけどやっぱりカリム様と一緒にいたいって気持ちは変わらないの
魔法学校について使用人の先輩方から教わったんだけど、命の保証がない授業とかもあるみたいで…私怖いんだ。
私のいない所でカリム様を失うような事があったらって思うと…
とても怖いの。
カリム様と一緒に入学できるジャミルさんが羨ましい…私がジャミルさんなら良かったのにね』
カリム様がジャミルさんには頼るけど私には頼らない事は沢山ある。そりゃあジャミルさんとの方が付き合いは長いのだから仕方ない事だけど…
『そういう事に嫉妬して、少し寂しいって思うこと…あるんだよね。心狭い女だよね、私…愚痴聞いてくれてありがとう。戻ろう。カリム様もきっと貴方のこと心配してるだろうから』
辺りはもう夕焼け色に染まっていた。