第12章 邂逅
想像したのかクスクス、と笑う杏。
そんな杏の反応に額に青筋を立てる不死川。
不「どういう意味だァ??」
『そのままの意味ですよ。
ふふっ、練習でもしてみます??』
未だに笑いを止められない様子の杏。
不「練習だァ??」
『えぇ。例えば呼び方とか……実弥さん??』
下から見上げるように名前を呼ぶ杏。
不死川はその瞳に宿る悪戯心を見逃さなかった。
『きゃっ、』
無言で杏の腕を引き、自らの方へと引き寄せる。
そして、耳元で小さく呟いた。
不「………杏。」
『っ、』
杏はバッ、と不死川から離れ、耳を抑える。
顔に熱がこもっていくのを感じる。
『……なんというか、照れますね、これ。』
不「…そうだなァ、」
相手の視界に顔が映らないよう、互いに顔をそらす。
気まずい空気が部屋を流れたとき、突然襖が開いた。
藤「すみません、お待たせいたしました。」
手に2つの袋を抱えた女性が戻ってきた。
『あ、ありがとうございます。』
藤「いえ。…少し顔が赤いようですが、大丈夫ですか??」
『え、えぇ。大丈夫です。』
女性からの指摘にビクッ、となりつつも袋を受け取る。