第12章 邂逅
先程から返事がいつもより小さいのに気がついた杏が座っている不死川の顔を覗き込む。
不「…なんでもねぇよ。」
『そうですか??無理はしないでくださいね。』
少し、頬を紅潮させる不死川。
しかし、杏は体調に異常はないと判断したのかスッ、と顔を離す。
『申し訳ありませんが、刀を入れられるような袋はございませんか??』
藤「ございます、少々お待ちくださいませ。」
振り返り、女性に尋ねるとバタバタと走っていく。
その背を見送り、不死川へと向きなおる。
『さて、不死川さん。
少し確認したいことがあるのですが…。』
不「何だァ??」
また先程のように顔を近づけられても困るため、しっかりと受け答えをする不死川。
『若夫婦として潜入するとなると、細かい設定を考えたほうが良いと思うのです。』
不「設定??」
『えぇ。例えばですが、今の私たちのようにお互いを苗字で呼び合う若夫婦はいません。そもそもそうなれば私も不死川になるわけですし。』
不「…そうだなァ。」
『他にも、若夫婦は幸せの絶頂期ですからそういう感じを出したほうがいいかと。不死川さんがいつもどおりでしたら、離婚間際の夫婦に見えてしまいそうです。』