第11章 護衛役
祈里の髪には左側に薄紫色の桜の花の髪留め、音羽の髪紐は青色の髪紐に空色の桜の花がついているものになっていた。
『…着物を選んでいたとき、蝶屋敷の子たちを思い出したんです。折角私のもとに来てくれたのですから、その…証、でしょうか。』
杏が着物を選んでいたときに思い出した蝶屋敷のしのぶ、アオイ、カナヲ、きよ、すみ、なほの姿。
全員が家族の証として、カナエから送られた揃いの蝶の髪飾りをつけている。
あのように、証というものに密かに憧れていたのかもしれない。
『それに…何かあったとき、それをつけていれば貴方たちだとわかりますから。』
最後の言葉だけ小さく、そして寂しそうな笑顔だった。
祈「…ありがとうございます。
大切に、つけさせていただきます。」
音「私は…このように可愛らしいものをつけたことはあまりありません。
似合って…ますでしょうか。」
微笑んでお礼を言う祈里と隣でうつむき加減で小さく尋ねる音羽。
『もちろんですよ。
とても、よく似合っています。』
スッ、と音羽の前にしゃがみこみ、彼女の前に手を差し出す。
音羽が顔を上げ、その掌を見ると先程まで自分がつけていた髪紐があった。