第11章 護衛役
祈「分かりました。では、お借りします。」
コクリ、と頷く祈里の反応に満足そうに微笑む杏。
『では、私は支度してきますね。』
音「はい。」
そう言って台所を出て衣装部屋へ向かう。
鬼殺隊関連の方の衣装部屋だ。
任務のない非番の日は私服で過ごすことが多いが、そうでない日は柱としていつでも任務に出れるようにしている。
隊服に身を包み、羽織を纏う。
自室に戻り、髪を結う。
簪をさしてすぐ、空いている窓から1羽の鴉が入ってきた。
杏(あの鴉…しのぶさんの鎹鴉だわ。)
スッ、と手を伸ばし腕にとまるように促す。
大人しく腕にとまった鎹鴉の足首をみると、紙が結んであった。
『ありがとうございます。』
お礼を言いながら結んである紙をとる。
杏(なにかしら…。)
紙をひらいて内容を読む。
『…しのぶさんに承知しました、と伝えてもらってもいいかしら。』
杏の言葉にコクリ、と頷く鴉の頭を軽く撫でて胡桃を取り出して与える。
『よろしくお願いしますね。』
胡桃を羽の下に入れる鴉に微笑み、腕を高く上げる。
バサッ、と飛び立つ鴉を見ながら身支度に戻る。