第50章 勝利と代償
そう伝えて部屋を出るためにお膳に手を伸ばす。
しかし、そこまでしても杏からの返事がないことに気づいてアオイが隣を振り返る。
そこには未だに目を瞑って余韻に浸っている杏がいた。
そんなに普通の食事が嬉しかったのかとアオイは小さな笑いをこぼしながら再び声をかける。
ア「杏さま??」
しかし、それでも反応がない。
アオイは下げようとしていたお膳を持ち上げず、ざわつく胸に手を当てる。
なんとも言えない不安な気持ちを押し殺しながらもう一度震える唇をゆっくりと動かした。
ア「杏さま……??」
アオイの絞り出すような声。
その僅か数秒後、杏はようやく目を開けた。
そして自分を心配そうな顔で見つめるアオイに気づいて少し笑顔を見せる、そんな姿にアオイはほっと胸を撫で下ろす。
しかし、杏はそんなアオイの様子を見て不思議そうに首を傾げた。
その表情は何故アオイに心配そうな顔を向けられているのか全く理解できていない、そんな表情だった。
アオイの胸の中に再びざわざわとした不安な気持ちが広がる。