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【黒子のバスケ】帝光の天使(中学校編)

第1章 プロローグ ー天使は飛び立つー


先輩から無視されるようになった。
事の始まりはそんな小さなことだった。
それが続くと、その空気を感じ取ったのか同級生も律を無視するようになった。
部の連絡事項が律にまで届かないことが増えた。
部活中、律に話しかける者はいなくなった。
たまにいつもどおり話しかけてくる男子部員と話すくらいだった。

それでも律は笑顔で過ごしていた。
部活外ではバスケ部ではないクラスメイトなどとは普通に話していたし、相変わらず部活後の鉄平との自主練習もしていた。

ただ部活内ではどんどん扱いが悪くなっていった。
2人組でする練習では誰にもペアを組んでもらえなかったし、ゲームをやっても誰もパスをくれなかった。

日増しにあからさまになっていくその行為は隣で練習をする男子部員でもわかるほどになっていった。

「律、大丈夫か?」

ついに見かねた鉄平が放課後の自主練習で声をかけた。
その言葉にそれまでゴールだけを見て、楽しげにシュート練習していた律は不思議そうな表情を鉄平に向けた。

「なんか、女子から…いじめとかされてないか?」

「いじめ?されてないよー」

律の浮かべる笑顔はいつもと変わらず、それが逆に違和感があるようにも感じる。

「練習中に嫌がらせとかされているんじゃないか?」

「されてないよー」

そう言うと律は鉄平から視線を外して、シュートを放つ。
ボールはいつもどおりバックボードに当たると吸い込まれるようにゴールに入り、律は嬉しそうに微笑む。
本当にバスケを好きなことがわかる。
律が嫌がらせをどう思っているかはわからない。
しかし、こんなに純粋無垢な子が傷つけられるのは間違っている、鉄平はそう感じた。

「そうか。じゃあ、何か困ったことがあったらオレに言うんだぞ?」

それには「うん!」と元気よく返事をする律。
律がSOSを出さない以上、鉄平はそれ以上のことをしてやることができなかった。
もし本当にピンチのとき、はたして律は自分に助けを求めてくれるだろうか?
鉄平はそんなことを危惧していたが、その心配は早い段階で進行していた。

部活以外の学校生活でも律を脅かす動きが出始めたのだ。

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