第6章 ー天使の穏やかなる放課後ー
赤司の指示で黒子と一緒に帰ることになった桃井は残っていたマネージャー業務を手早く終わらせ、そそくさと帰り支度を始めた。
律も一緒に支度をしていたが、桃井は身だしなみまで整え始めたので先にロッカールームを出ることにした。
ロッカールームから出ると少し離れたところで赤司が壁にもたれて文庫本を読んでいた。
そこまでぴょんぴょんと跳ねるように駆けていく。
「赤司くん、お待たせしましたー」
文庫本の横からぴょこんと顔を出した笑顔の律につられて赤司も表情を和らげた。
「そんなに待ってないから大丈夫だよ。忘れ物はないか?」
「うん、大丈夫!」
律の元気な返事を聞き、「じゃあ行こうか」と連れ立って歩く。
校門まで行くとそこには2年1軍レギュラーの面々が揃っていた。
「あ、今日はみんな一緒に帰るのー?」
律が無邪気に尋ねる。
「僕は赤司君に桃井さんと帰るように言われてここで待っているんです」と、淡々と黒子。
「オレはさつきにノートコピーさせてもらうから待ってんだ」と面倒くさそうに青峰。
「オレはなんか楽しそうなことがありそうだからここにいるッス」とニヤニヤしながら黄瀬。
「お腹へった〜。これからみんなでコンビニでも行く〜?」と呑気に紫原。
「別にオレは誰かを待っていたわけではないが、今から帰るんであれば一緒に帰ってやらなくもないのだよ」と横目で緑間。
「そうなんだー」
さりげなく一緒に帰ろうという緑間の誘いも律には伝わらなかったようで、全員分まとめての返答に流されてしまい、緑間は「ぐっ」とそれ以上何も言えなくなってしまった。
「橘、桃井が来るまで少し待つ」
赤司がそう言えば律はにこやかに了承した。
それから数分ほどして桃井はやってきた。
てっきり黒子と二人きりで帰れるものだとばかり期待していた桃井は、その場の状況を見てひどく落胆したが、あれよあれよと言う間にみんなで帰ることになってしまっていた。
それを見届けると赤司はくるりと皆に背を向けた。
「桃井、あとは任せた。黒子に寄り道をさせず、まっすぐ帰らせてくれ。橘、帰ろう」
「あ、うん。じゃあ、みんな、また明日ねー」
律は皆に手を振ると先に歩いて行ってしまう赤司に小走り気味についていった。