第6章 ー天使の穏やかなる放課後ー
「え、りつちゃん、青峰君みたいなのがいいの?」
「んー、かっこいいと思うよー?」
「それって“恋”とか、そうゆう感じの?」
「恋?んーん、律、そうゆうのよくわからないんだけどー、青峰くんのバスケってすごくかっこいいよねー」
ほのぼのと言うと律を見ていると、黒子を意識してドギマギしている自分が何となく馬鹿らしく思える桃井であったが、それでも律はどことなく変わった思考回路を持っているなということはいつも感じていることなので、諦めにも似た感情で「そうなんだ」とだけ返しておいた。
しかし、この話の流れは良い機会だと思い、いつも抱いている疑問をそれとなく訊いてみることにした。
「りつちゃん、最近赤司君と一緒にいることが多いけど、りつちゃんにとって赤司君は特別なの?」
「うん!赤司くんはね、律のこと褒めてくれるから好きー」
律はいつも笑顔なのだけど、例えるなら顔の筋肉が柔らかくなったようなふにゃっとした笑みである。
しかし、この時の律はとても嬉しそうににっこり微笑んだ。
それを見ただけでも赤司が律にとって特別なのだろうということを知るには十分過ぎたが、自分の恋も正確に把握しきれていない桃井にとって、その“特別”というのがどういう感情であるのかがわかる訳もなく、ただそんな素直に自分の感情を表現できる律が羨ましいと思った。