第1章 プロローグ ー天使は飛び立つー
そんなある日のことだった。
いつもの公園で1人、シュート練習をしていると、
「キミはいつもバスケしてるんだなー」
と、誰かに声をかけられた。
声をする方を見ると、背の高い少年がいた。
微笑みながらこちらに歩いてくる少年を見て、律も笑顔になる。
「バスケ、するの好きなんだー」
「そうかー。たまにここで見かけるけど、なかなか上手いもんだよ。小さいのに頑張るなー」
そういうと律を高い高いするように持ち上げた。
律にとってそれは昔から兄にやってもらっていた大好きなものだった。
そのため驚いたり、警戒したりすることもせず、嬉しそうに笑った。
その姿が可愛くて、やっている少年もますます笑顔になった。
「オレは木吉鉄平。中学校でバスケ部なんだ」
そういうと自分の持ってきたボールでシュートを打った。
ボールは真っ直ぐゴールに向かったが、惜しくもリングに弾かれて大きく跳ねた。
鉄平は慌ててリバウンドに走ると、ゴール下から再度シュートを決めた。
「一発で決めてカッコイイ所見せようと思ったんだけどなー」
少し気恥ずかしそうに笑いながら鉄平は後頭部を擦る。
「んー、でも鉄平くん、背が高いからリバウンドがカッコ良かったよー」
ニコニコ笑ってそう言うと、律もシュートを打った。
ボールはバックボードに当たってからゴールに入った。