第4章 ー天使と巨人ー
そんなある日の部活時間。
「ねーねー、橘ちん」
「なーにー?」
「背が小さいとチ○コも小さいのー?」
「?」
律は紫原の質問の意味がわからないのか、体を倒して紫原の顔を覗き込んだ。
「だってさー、いっつも肩車してるけど、橘ちんのチ○コ当たってる感じしないんだよねー。やっぱ、身長に比例すんのかなー?」
「んー?」
未だに意味が理解できていない律は首を捻っていたが、代わりに答えてくれた人物がいた。
「紫原、橘は女の子だからそんな下品な話は振るものじゃない」
いつの間にか近くにいた赤司が静かな調子で言った。
「えー、だって、男子の制服着てんじゃーん」
「それはそれなりの理由があってそうしているんだよ」
「『それなりの理由』って何なのさー」
「それは秘密だよ。橘、話があるからそろそろ降りてきてくれないか?」
「あ、はーい。ムッくん、降ろしてもらってもいいー?」
「あー、うん」
紫原はいつものように律の脇を持って床に降ろした。
その途中で何かに気付いたようにハッとして、律から手を離すと自分の手を見て「本当だ」と呟いた。
それに赤司が気付いた。
「どうかしたか?紫原」
「あー、橘ちん、本当に女の子なんだねー。今まで気づかなかったけど、おっぱい、少しだけ柔らかーい」
その言葉に周りにいた部員はギョッと紫原を見た。
あの赤司ですら目を見開いたくらいだ。
しかし、すぐにその目はスッと細くなった。
当の律は「ムッくんのえっちー」などと笑っていて、胸を触られたことなどは特段気にしている様子はなかった。
「紫原、これから橘を持ち上げるのは禁止だ。それと、今から集合がかかるまで体育館周りを走ってこい」
「えー」
赤司が冷たい声でそう言い放つと律の腕を掴んで連れて行ってしまった。
紫原は何が起こったのか飲み込めず、立ち呆けていた。
「今回は完全にお前が悪いのだよ。早く走ってこい」
緑間にそう声をかけられると、しぶしぶその場を後にしたのだった。