第3章 ー天使は才を慈しむー
何を言うのかと思ったら、そんなこと。
自慢じゃないが身なりには気を付けているし、爪など週に2度は切っているから長くはないはずだ。
「爪は切っている。長くはないだろう?」
「んー、でも、整ってないー」
困ったような顔をしている橘に何だか腹が立っている。
オレ達のやり取りを静観していた赤司が見かねたのかようやく口を開いた。
「橘、緑間の爪を整えたらどうなる?」
「んーと、ね。いい事だらけだよー」
問いに対しての明確な回答じゃないことに更に腹が立つ。
オレの表情もそれを示しているはずなのに、やはり橘は気にするそぶりはない。
ただ気付いてはいるようで、「じゃあさ、体育館に行こー?」と部屋を出て行ってしまった。
橘律は全くもって言動が理解不明な人間だということだけが理解できた瞬間だった。
赤司の方を見ると、困ったように笑って肩をすくめてみせたが橘の後を追って部屋を出ていった。
オレもそれに倣うしかなかった。