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【黒子のバスケ】帝光の天使(中学校編)

第3章 ー天使は才を慈しむー


「だ、そうだが。橘、今日の練習を見ていてどうだった?」

「うん!緑ちゃんはSGだから練習中は3Pシュート多めの動きだったんだけどー」

橘はウキウキと手にしたノートを開く。
中には人型のイラストが描かれてあり、何ヶ所か体の部位から矢印が出ている。
オレが理解できるのはそこまでで、それ以外は日本語、英語、そして英語ではない外国語、たぶんドイツ語だろうか?
とにかく、まとまりのない文字の羅列が多数あった。
それを指さしながら楽しそうに説明する橘の話も筋肉の名称やその他の専門用語が、これまた言語関係なく飛び出すものだからほとんど理解できるものではなかった。

「で、やっぱり左前腕と下肢のケアは必須だと思うんだけどー」

総括は至ってシンプルで助かった。
が、次の瞬間、橘はオレの左手をとった。
優しく握って持ち上げたかと思ったら、流れるように自分の指とオレの指を絡めた。
いわゆる恋人つなぎをするような形がとられ、思わず反射的に振り払ってしまった。

「急に何するのだよ!?」

振り払われたことが不思議でたまらないというように、首を少しだけ傾げてオレを見つめる橘。
オレは急なことで騒がしくなった心臓を落ち着けるように一度だけ深呼吸をする。
オレが平静を取り戻す間、赤司が「橘、急に体に触ったら驚いてしまうよ」と優しく窘めていた。
そこで橘は初めてオレの行動に合点がいったようで、手の平に拳をポンッと打ち当てた。

「じゃあ緑ちゃん、手、見せてー」

今度は自分の手の平にオレの左手を乗せた。
なんとも小さい手で、その手の平にはオレの指先しか収まらなかった。
その指先を大切な物ででもあるかのように優しく包み、微笑みながらゆっくりと撫でられれば、ようやく落ち着きつつあった心臓が再び跳ね上がる。

「さっきから何なのだよ!」

焦りが少し語気を荒げてしまったが橘はそんなことを気にするそぶりもなく、目線をオレに向けて顔をクシャッとして笑った。

「あのね、緑ちゃんはもっと、爪を整えた方がいいと思うのー」

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