第2章 邂逅そして、第一調査
カラン
ぼーさんと談笑していたオフィスに来客を示す音が鳴る。
「いらっしゃいませ。」
慌てて、椅子から立ち上がり来客へと視線を移すとまだ若い女性だった。少し茶髪のパーマがかかったロングヘア。服装はマキシ丈のワンピースに日焼け防止だろうかカーディガンを羽織っている。
「急にすみません。予約とかしていないのですが、大丈夫でしょうか?来客中でしたら改めますが、相談したいことがありまして。」
言葉遣いも丁寧かつ、ぼーさんを他の客と勘違いしたらしく女性はぼーさんをチラッとみると気まずげに視線を逸らした。
「いやいや。大丈夫。俺はあー…ここの協力者みたいなものだから。」
「そうなんです。よかったらどうぞ?」
慌てて、今まで自分たちが使っていた机の上を片付け、彼女を座らせると新しいお茶を入れる。そして、不思議なことに気付いた。大概、自分以外の大人がいる時にはその人を所長と勘違いする人が多いのだが、この人は何故、来客だと思ったのだろう…普通に考えたらここの関係者だと思うのではないか?とふと思い立って静かに座っている彼女を見てみる。
「一個聞いてもいいか?何で俺がここの関係者じゃないと思った?」
ぼーさんも不思議に思ったらしい彼女へ問いかける。
「…お茶碗が来客用だと思ったので。そちらの彼女は多分自分のマグカップなのに対して、そちらの男性のものはあきらかに来客に出す用でした。ここの関係者で従業員の方なら彼女みたいに自分のカップを持っていると思ったので。」
…確かに自分用にとマグカップを持っている。そして、ナルたちもやはり来客用とは違うカップを使っているため納得してしまった。
「お見事!よく見てるなあんた…っと年上か?」
「今年、28になります。」
「おっと。敬語の方がいいですか?」
急に敬語になったぼーさんに対してふふっと女性が笑うと首を振った。
「堅苦しいの苦手だから、さっきまでの感じでお願い。」
ちょっと砕けた話し方に親しみを感じて何だかほんわかとした空気になったところに、やはり人の気配を感じたらしいナルが自室から現れた。