第4章 相対する2人
杏寿郎に呼ばれる声で目を覚ます
いつの間にか眠ってしまったらしい明かりを点けていないからか部屋は真っ暗だ
「ごめん、寝ちゃった」
「大丈夫だ、腰はどうだ?」
「うん、さっきよりはマシかな?」
マシとは言っても痛いものは痛い
起き上がるのが辛いのを見兼ねて背中を支えてくれる
「夕飯の支度ができたんだ、行こう」
「千寿郎くんのご飯とっても美味しいから楽しみね」
千寿郎くんのご飯は本当に美味しいのだ
亡くなられた瑠火おば様と同じ優しい味
ご飯の時まで世話をかけるわけにはいかない
痛いと悲鳴をあげる腰に鞭打って正座をしてご飯を食べた
「うん!とっても美味しいわ!千寿郎くんまた腕を上げたわね」
「本当ですか?ありがとうございます!」
「美味い!美味い!」
献立はご飯と杏寿郎の好物のさつまいもの味噌汁とお魚と肉じゃがの小鉢と青菜のおひたし
本当に美味しい
うちでは洋食ばっかりだから出汁から取っているお味噌汁がいい香りだ
横で美味い!を連呼してる杏寿郎を放っておいて久々に会った千寿郎くんと会話を楽しみ夕食を平らげた
片付けはさすがに手伝おうとしたら腰が悪化したらいけないから休んでてくれと言われ素直に休ませてもらった
「千寿郎くんのお料理本当に美味しかったわ」
「千寿郎は昔から料理が上手いからな!」
「その点杏寿郎はちょっと苦手よね、昔おにぎり作ってくれたと思ったらボールみたいにおっきいパムパム爆弾おにぎり持ってきたもの」
「その話はやめてくれ!恥ずかしい!」
まぁ美味しかったからいいのだがクスクスと笑うと杏寿郎はムンとしてしまった
「ごめん、ごめん」
「全く!冬華は直ぐにその話をするからな!」
「はいはい、もうしないわよ」
ムンと少し不機嫌な顔になる杏寿郎は本当に可愛い
そんな風には思っていたのも束の間だった
「ところで冬華」
「ん?」
「放課後、本当は図書室で何をしていたのだ?」
喉がヒュっといって口の中が乾いていくのを嫌に鮮明に感じた