第2章 煉獄杏寿郎という男
ゴクンと口の中に溜まっていた唾液を飲み込むと
「誘っているのか?」
そう尋ねてくる
「...バカぁ」
軽く睨みつけると悪びれる様子もなく謝ってくる
膝を少し動かすと何かが当たった
何かと思い目をやると着流しに越しにでも十分すぎるほどに膨れ上がり主張している杏寿郎のモノだった
杏寿郎も気づいたようで少し困ったように眉を寄せる
「すまないな、トイレを借りるぞ」
「うん、」
そう言って部屋に備え付けのトイレへ入った
自分でしごくのだろう
杏寿郎はどれだけ苦しくても絶対に私を犯そうとはしない
高校卒業までという鎖が彼を締め付けているのと私の事を考えてくれているのだろう
とても大事にしてくれていることが痛いほど伝わる
それなのに私は今日別の人と決まりを破ったばかりだ
本当に申し訳ないなと思いながら彼の帰りを待つ
杏寿郎のは一回勃つと萎えるまでが長いので暫く出てこないだろう
襲って来る睡魔と脱力感と戦いながら待つこと数十分
ようやくトイレから出てきた
「お帰り」
「ただいま」
優しく頬を撫でてくれる手が気持ちよくて思わず擦り寄る
「俺の事を犬と言ったが冬華はまるで猫のようだな」
「私が?」
「あぁ、今のも猫そっくりだったぞ」
「そうかなぁ?」
あまり実感が湧かなくて首を傾げる
でも赤ん坊の頃から一緒の彼が言うのだからきっとそうなのだろう
「そろそろ寝るか」
「うん...」
もう10月なので少し肌寒いが杏寿郎が同じ布団にいると少し暑いくらいに感じる
でもその温かさが心地よくてちょうどいいのだ
「おやすみ、杏寿郎」
「よもや、よく眠れ冬華」
抱き枕のようにぎゅっと抱きしめられ足を絡められる
私も負けじと自分より一回りほど大きい彼を抱きしめるとトクトクという心音が聞こえそれが心地よく、意識は直ぐに暗闇の中へ落ちた