第1章 不死川実弥との出会い
彼......不死川実弥と初めて言葉を交わしたのは1年の9月頃だった
金曜日の放課後図書室で数学の予習をしていた
普段は放課後習い事や芸事で暇な事などそうそう無いが金曜日だけは何も入ってなかった
かと言ってどこに寄り道する訳でもないし特段早く帰ってもやることが無いのでいつも図書室で五教科の中でも苦手な部類である数学を予習していた
殆ど利用者のいないこの図書室は冷暖房完備で勉強するには最適な環境だった
その日も図書室で勉強していた
居るのは勉強している自分か図書委員の人間くらいだ
カリカリとシャーペンを走らせる音と時計の秒針が進む音そしてここからは死角になっているがカウンターでと図書委員が本のページをめくる音だけが聞える
勉強を始めて数時間経った頃ふと集中力が切れた
シャーペンを置いてぼーっとする
何を考えるでもなく日の傾きかけた校庭を見下ろしながら外の風景を眺める
すると後ろを誰かが通った
人が入ってきた気配はなかったので図書委員だろう
気にせず外を眺めていると何か布のような物が落ちる音がした
見てみると先程までは無かったアルファベットで刺繍が入ったハンカチが落ちていた
誰の物か想像するまでもない
恐らくこの先のコミックの本棚にいる図書委員の物だろう
そう考えハンカチを手に取り持ち主と思われる人物がいる本棚まで足を進めた
コミックのコーナーに入るとやはり居た
「あの、」
声をかけると少し驚いた様にこちらを向く銀髪の彼
「落としましたよコレ」
ハンカチを差し出すとスラックの後ろポケットをまさぐりハンカチが無いことを確信したようだ
「悪ぃなァ」
やはり彼ので間違いなかったようだ
ハンカチを受け取ると後ろのポケットに入れた