第1章 異変
「ところデ」
夏目くんが一段落したとの見計らって声を上げる。
「ここはどこなノ? 見たところ、君たちも制服を着てるからどこかの学校なんだろうけド」
こちら側は全員が思っていたであろう疑問を口にする。
「ここは、ナイトレイブンカレッジ。聞いた事くらいあるでしょ?」
エースさん(同い年か年下だろうが、念の為さんを付けておく)が常識だと言いたげにサラッと知らない学校名を答える。
私たちは困惑しながら顔を見合せ、誰も知らないことを確認すると、彼もそれを察したのか呆れたように言う。
「うっそ、そんなことも知らないの?」
「なんかデジャヴを感じるんだゾ」
グリムさんは、何だか嫌なことを思い出したような苦い顔をしている。
ユウさんも苦笑している。
「そうだね」
「ということは、まさか」
デュースさんが少し考えて、何かに思い当たったのかはっとした顔になった。
「異世界から来たのか!?」
異世界、いやまさか。
そんなことあるわけがないだろう。
確かに現実ではありえないような、空中に水が現れる魔法としか説明がつかない事がさっき起きたわけだが。
まだ放心状態で、すっかりスルーしてしまったけれど。
そもそも、誰も突っ込まないなんて本当に冷静で羨ましい。
それとも、実は混乱しすぎてもはや思考すらままならないのか。
後者では無いと思いたい。
「あぁ、被害者がここにも……」
ユウさんが同情するような目でこちらを見てくる。
まるで、自分もそうだったとでも言いたげに。
「その様子から察するに、君もそうなのかね? そして、帰る方法がないからここにとどまっていると?」
やはり前者だったようだ。
混乱していてそこまでしっかり考えることはできない。
気まずそうに頷くユウさんに、私はどうしたものかと頭を抱えた。