第1章 異変
「ハァ、ハァ……。こんな所にいたのか」
バンッという音がして部屋に光が差し込む。と、同時に聞き慣れた声。
扉が背中側似合った私たちに被害は無かったが、その光をもろに食らった異邦人6名は目を細め顔を逸らした。
朔間さんに至っては、なぜか苦しそうにしている。
「ジャック? どうしたんだ」
デュースが驚いたように振り返ると、そこには厳つい見た目にケモ耳という、とんでもなくギャップに溢れた生徒が息を切らせて立っていた。
「こんなとこで一体何してるんだ、もう授業は始まってんだぞ」
はっと、いつも身につけている腕時計を確認する。
いつの間にか授業開始のチャイムはなっていたようで、約10分程度の遅れである。
逆によく10分で探し出せたと思ったが、彼はとんでもなく運動神経がいいのだった。それに彼は、狼の獣人でもあるし嗅覚もいいのだろう。その気になればこの程度朝飯前なのかもしれない。
それよりもどうしたものだろうか、彼らをこんな所に置き去りにするわけにもいかない。
「せっかく来てくれたとこ悪いんだけど、ちょっと俺ら今手が離せないんだわ。先生に上手いこと言い訳しといてくんね?」
考え込む私よりも早く結論を出したらしいエースが、ケモ耳生徒にそう指示を出すように言った。
が、彼が理由も説明されずそれを聞き入れるはずが無いのは考えずとも分かった。
「何言ってんだ、授業はちゃんと受けるべきだろ」
私達が理由を話そうと口を開く前に、朔間さんの声が部屋に響く。
「我らの事など気にせず、おぬしらはきちんと己の成すべきことを成すがよい」
「でも」
デュースが続いて声を上げると、朔間さんはそれを止めるようにゆっくりと首を横に振った。
「分かった。放課後になったらまた来るよ。……行こうぜ」
「大人しくしてるんだゾ!」
エースとグリムが最後にそう声をかけると彼は満足そうに赤い満月の瞳を細めた。
それを見届け、私達は彼らの元を後にした。