第1章 異変
夏目くんも自己紹介を終えると、残りはあと3人。
その内の1人が少し苦しそうな声を出した。
「う〜ん、『おみず』がほしいです……。
このままだと、『ひからびて』しまいます……」
「さすがに、今この状態で水を持っている人はいないんじゃないかナ……」
かなり辛そうにしている先輩に、ハートのフェイスペイントの少年が言った。
「水が欲しいの?」
「はい、ぼくは『おさかな』なので……。おみずがないと、『ひからび』ちゃうんです……」
「あんたまさか人魚? もう関わりたくなかったんだけどなぁ。まぁいいや、水ね。はい」
と、彼が胸ポケットにしまわれた大きな宝石のようなものが着いたペンを降ると先輩のちょうど頭上、何も無い空間から水が溢れ、ザバンッという音を立てて水の塊が弾けると彼をびしょびしょにした。
「あぁ〜、『いきかえった』きぶんです……♪ ありがとうございます〜。『しんせつ』なひとには、おれいをしないとですね〜。ぼくは、『しんかいかなた』……☆ よろしくおねがいしますね〜」
先程の死にそうな声とうって変わり、生き生きと自己紹介をする奏汰さんに一同はほっとした。
「すまんのう坊や、助かったわい。」
「ほんとうに『たすかり』ました〜」
「いいっていいって」
この人はかなり親切な人のようだ。見知らぬ地で不安しか無いが、彼の存在がせめてもの救いだと思った。
「さて、そろそろ我輩も自己紹介をするとしよう。我輩は、朔間零。今まで紹介してきた4人をまとめているということになっておる」
「実際、この可笑しな集団をまとめられるのは君しかいないだろう」
「我輩もべつに、まとめきれてないと思うんじゃが」
零さんも簡単に自己紹介を終え、宗さんと少し話すとその場にいた全員が私に注目した。
残りは私だけ。
「そして、ここにいるのは我らの『プロデューサー』じゃ。ほれ、嬢ちゃんも挨拶せい」
零さんに言われて私は、少し緊張しながらもはっきりと声を出した。
「あんずです。彼らアイドルの『プロデューサー』をさせてもらっています。よろしくお願いします」
向こうの3人が満足そうに笑ってくれたことで、私もようやく笑みを浮かべることができた。