第1章 異変
その日私は、普段は見かけないはずのものを見かけた、気がした。
気がした、と言うのも私はこの世界に、学園に飛ばされて来てまだ間もないし、ただ見落としていただけだったかもしれないからだ。
「鏡の間に、変な棺桶?」
「それが6つもか?」
「オメーの見間違いじゃないのか?」
いつもの3人と食堂で昼食をとっている間に、その違和感について相談してみた。
最後に意見を述べた猫のような狸のようなモンスターに、私は反論する。
「いやぁ、6つもあるのに見間違いはないと思うけど……」
でも本当に見たのだ。確かにこの目で。
あそこにある棺桶は全て魔法と思われる力でふわふわ浮いているのに、その6つだけは床にどーんと落ちて(?)いたのだ。
しかし、ハートのフェイスペイントに明るい茶髪の生徒は言った。
「でもさー、オレ達もだけど、ユウもここに入ったばっかりじゃん? 見落としてたってことはないワケ?」
「まぁ、それは確かに思った。でも、すごく違和感があって」
と、私が説明をしているとスペードのフェイスペイントのいかにも真面目そうな生徒が言った。
「それなら、確かめに行った方が早いんじゃないか?」
「確かに。それじゃあ、食べ終わったら出発なんだゾ!」
それに続いてモンスターが拳を突き上げて宣言すると、一気にご飯をかきこみはじめた。
私も、他の二人もそれに負けじとご飯を平らげて行った。
鏡の間。
ここに来るとこの学園に入った時を思い出す。
まぁ、そんなに経っては居ないんだけれど。
あの時は本当に大変だったなぁ……。
「さーて、例の棺桶はーっと」
茶髪の彼は、ものを探す時にお馴染みの目の上に手を添えるポーズをしながらゆっくりと部屋を見渡した。
と、直ぐにある方向でその動きを止めると呟いた。
「なんだよ、アレ……」
そう、彼の見つけたそれこそが私の見つけた違和感。
謎の棺桶6個であった。
「俺も見覚えがないな」
スペードの彼もまた、不思議そうに呟いた。
「オレ様もなんだゾ……」
うーん、と4人で唸っているとふと、音がたった。
まるで、それは何かの蓋をずらすような音で……。
「棺桶が、開いていく……!」