第1章 異変
6つめの鏡の中。
そこには、寮である建物とそれを支えるかのように、青く目があるはずの窪みを光らせる骸骨が柱となっていくつか立っている。
なんだか地獄のに来てしまったような、そんな気がして鳥肌がたった。
「あ、あの。……えっと、あ、あなた達が、い、異世界から来た人たち……です、よ、ね……?」
その建物の前に立っていたその人に気が付かず、声がした途端幽霊が出たかと思いひっ、と小さく悲鳴をあげてしまった。
すると、青い炎のような髪の男性が今にも寮に引っ込んでしまいそうにしながら、早口ででまくし立てる。
「あ、あ、すみません。ぼ、僕みたいなのに案内されるとか、い、嫌に決まってますよね。そうだ、やっぱりオルトに頼むべきだった。僕よりオルトなら……」
ブツブツと1人で喋り続ける彼に、どうしたものかと考えていると、宗さんが業を煮やしたかのようにため息をついて言った。
「君が寮長なのではないかね? 僕は今日中にやってしまいたいことがあるから、案内をしてくれるなら早くして欲しいのだが」
すると、彼はひぃ、と言いうとなにか思いついたように端末を差し出した。
私がそれを受け取ると、端末に文字が表示されてそれを読み上げる声だけが響く。
「この寮は、死者の国の王の勤勉な精神に基づくイグニハイド。寮長は一応僕で、名前はイデア・シュラウド」
音声が止むとイデアさんは頷き、自分の持っていたもう1つの端末を操作した。
どうやらその端末から私達の持っている端末に文字を送信しているようだ。
「それじゃあ、案内するからついて来て」
寮の中は外見と異なり、なんだかやたらと機械が多く時代の最先端の技術のようなものを感じた。
私は機械に詳しくないので分からないけど。
他の寮ではみんな廊下を歩き回ったり喋る声が聞こえてきたりしたが、ここは時間のせいか誰も外にはおらず、しーんとしていた。
「なんだか人気がありませんねぇ」
「みんな基本的に、人と話したり遊んだりとかしないから」
イデアさんが相変わらず端末で案内してくれる。
なんだか不思議な感じがしたが、彼は彼なりに一生懸命案内してくれているんだなということは分かった。
「こ、これで案内は終わり……。ぼ、僕なんかの案内についてきてくれて、ありがとう」
最後に彼はほっとしたような笑みを浮かべてくれたので、私もそれに感謝を込めて微笑み返した。
