第1章 異変
「ジェイド、フロイド、お疲れ様でした。……釣れそうでしたか?」
彼らが去った後、僕達はVIPルームに残って話を続けた。
「1人は確実に。話を聞いた限り、彼はもともと海がお好きなようですし」
「あー、あのゼニガメくん?」
「ゼニガメ……?」
僕にはカメと接点がある人物が思い浮かばず考える素振りをしていると、ジェイドが補足する。
「カナタさんのことです」
あぁ、あのやけに目を輝かせていた人のことか。
「ですが、なぜゼニガメなんです?」
素直に疑問を口にすれば、フロイドも素直に答える。
「カメのぬいぐるみがお気に入りなんだって。それに話し方がなんか子供っぽいし。だから、ゼニガメくん」
「ふむ、そうですか。……まぁ、1人でも釣れれば誰だっていい。彼らのうち1人でも働いていれば、友人である彼らが来店する可能性は高い」
「さっすがアズール、ずるがしこーい!」
「全くですね」
どうせ初めから僕が何を考えていたかなんて、お見通しだったくせに。わざとらしく驚いたようにしながら僕に続いて2人が言う。
「これで今月も一儲け間違いなしですね」
なんにせよ、彼らももう僕の手の内だ。
思わず笑い始めた僕に同調するように2人も笑い声を響かせた。