第1章 異変
「申し訳ございません。2人から聞いているとは思いますが、とても忙しかったので手が離せず。どうかお許しください」
寮の案内が終わり私達は、寮の隣に建つカフェのVIPルームに通された。
そこに座っていたのは、渉さんと違った色の銀髪に眼鏡が似合う男性だった。
「2人がどこまで説明されたか分からないので、僕からも少しだけこの寮のことを話させて頂きます。ここはオクタヴィネル。海の魔女の慈悲の精神に基づく寮です」
双子はいつの間にか彼の背後に控えて楽しそうに笑っている。
笑っているのに、そのあまりにも高い身長のせいか分からないがどこか威圧を感じた。
「僕は寮長であり、このモストロ・ラウンジの経営者でもある、アズール・アーシェングロットという者です」
メガネをクイッと上げると、まるで獲物を見つけた捕食者のようにアズールさんは話し続ける。
「もしも、お困りのことがありましたら是非またお越しください。僕がどんな願いでも叶えて差し上げましょう。……ポイントさえ貯めていただければ、ね」
「こちらのカフェでは、50ポイントを貯めるとアズールにお悩み相談をできるというシステムを導入しておりまして」
「だから、もしなんかあったらまた来てね。オレも気が乗ったら相手してやっからさ」
3人がそう言ってにこりと笑うのを見て、ユウさんとグリムさんはぽつりと呟いた。
「ほんとに懲りないなぁ/懲りないんだゾ」