第1章 異変
「……」
その場にいた全員が黙り込んでしまった。
それもそうだ。私だって今こそ慣れてしまったものの、最初に帰る手段がないことを知らされた時は絶望しか無かった。
進歩がない今も不安ではあるが。
「とりあえず皆さん、これからしばらく行くところも無いでしょうし、ユウさん同様オンボロ寮に泊まって頂くということで、 ……あぁ、でもそうすると女性であるアンズさんはどうしましょう」
「寮はそこにしかないのかね?」
斎宮さんが問う。
「一応ありますが、あなた方は生徒では無いので……。あぁ、どうせ1ヶ月だけですし生徒になってしまいますか? 習うもの全てが魔法に関するものというわけではありませんし。ふふ。私、やっぱり優しいですねぇ」
学園長がとんでもないことを決定してしまった。
それで彼女の寮問題は全く解決したわけではないし、どういうつもりなのだろう?
そう思っていると、同じことを考えたのであろうグリムが口を出す。
「だとしても、アンズはどうすんだ? 結局解決してねぇじゃねぇか」
「この小娘は、ユウとやらのオンボロ寮とやらで寝泊まりすればいい。僕達はその別の寮で暮らさせてもらってもいいかね」
さっきから、彼はなぜ私の所へ彼女を来させようとするのだろう。
……まさか。
サッと血の気が引いていくのが自分でも分かった。
「……いいでしょう。特別ですよ? 私、優しいので」