第1章 異変
「つい先日の事なのですが、ユウさんを元の世界に戻すために少し調べていたのですが」
あぁ、ちゃんとその辺はやっていてくれたようだ。
なんだかいつも、やってるんだか怪しかったので、てっきりまだまともに手をつけていないものと思っていた。
「そこで、私はある物をみつけまして。それがあの棺桶だったのです」
あの棺桶は、学園長が用意したものだったのか。
でも、なぜだろう。棺桶なら腐るほどあるだろうに。
「あの棺桶は、ランダムで決まった場所に繋がり、そこへ物や人を送ることと、またその逆のことができるというものだというので、これだ! と思いましてね」
「もしそれで、異世界に繋がることができたとしたら、ユウは帰れるんだゾ?」
グリムが口を挟むと、学園長は頷いた。
「そうです。もし、可能性があるなら試してみなければと、とりあえず出せる金額ギリギリの6つ買ったんです。1度ランダムで決まってしまうと、二度と変わらないそうなので」
「それで、うっかり我らの世界に繋がってしまい今に至るんじゃな」
「はい。まさか、こちらが意図せずとも勝手に繋がってしまうとは夢にも思っていませんでした。これは私の失態です。ですが一応、あなた方を帰す方法はあります。しかし、これが大変で」
学園長は1つ間を置くと、何かを宣言するかのように言った。
「あの棺桶は新月の日にのみ1度だけ動く……。つまり、次の新月まであの棺桶は機能しないのです」