第1章 異変
ひとまず私達は自己紹介と、これまでの経緯を彼に話すと納得してくれたようだ。
そんなにすんなりと受け入れてもらえる話ではないとは思うのだが、やはりユウさんという前例がいるせいだろうか。彼は特に質問もしてこなかった。
そして、こんな所にいるのも何でしょう、と彼は学園長室へと案内した。
どうやら、彼はこの学園の学園長なのだそうだ。
それにしても、歴史の教科書に出てくるヨーロッパ辺りの城に似たようなこの建物は、私達のいる夢ノ咲学院に負けないくらい広く、複雑な作りをしているようだ。むやみに動かなくて良かった。
「あなた方の事情は分かりました。では、まずこの世界の説明からしましょう」
学園長は、彼の普段使っているのであろう机の椅子に腰かけると手を組んで口元に添えた。
「この世界は、ツイステッドワンダーランドと呼ばれています。あなた方の世界には無かった、魔法が存在する世界です。そしてここは、そんな魔法を極めんとする者が集う学び舎、ナイトレイブンカレッジ。数ある魔法士育成学校の中でも名門と言われているんですよ」
魔法……。
改めてその世界の住人から聞かされると、私達は本当に自分達の常識が通用しないような世界に飛ばされてしまった、そう納得するしかない。
まだ心の中で信じていた、これは夢か何かだという希望は打ち砕かれた。
「学園長」
彼を呼ぶ声と共に扉が開くと、ユウさんとグリムさんが現れた。
時間もそう経っていないし、まだ鐘が鳴った様子もないので、今は授業中のはず。
なぜ彼らがここにいるのか疑問だったが、それは直ぐに学園長が回答をくれる。
「彼らはあなた方に関わりがあるようですので、呼び出しました。授業はもちろん免除ですよ。私、優しいので」
一体いつ呼び出しなんてしたのだろうか。これも魔法の力なのだろうか。
「ユウさん、グリムくん、あなた方にも聞いていて欲しいことです。いいですね?」
彼らは頷くと、学園長は語り始めた。
「まず、この現象の原因はもう分かっています」
私はごくりと息を呑む。
てっきりこういう時は原因は分からないものと思っていた。
確か、弟のやっているゲームにも似たような展開のものがあった気がしたが、原因に繋がる謎を解くのが大変だったとか言っていた気がする。