第9章 心の奥にあるものは? トレイ・クローバー
私は最後のダンボールを畳んだ。
「ようやく終わった〜〜!」
『お!良かったな!』
耳に差し込んだイヤホンから愛しい彼の声が聞こえる。
大学2年にしてようやく一人暮らしができて、荷解きを1人ではしんどいからと言って、彼氏と電話しながら行っていたのだ。
「あ、お隣さんに挨拶してくる〜」
そう言って私は電話を切る。
手土産を持って、玄関を出た。
私が引越しを決めた理由はもう1つあった。
それはストーカー被害だ。
ずっと緑色の髪をした男に私はストーカーされており、家族に迷惑をかける訳にもいかず、こうして一人暮らしを決めた。
実家とこのマンションはかなり距離があるしきっと大丈夫。
ーあれ?隣の表札真っ白だ…
普通ならそこに苗字の1つや2つ書いているはずだが、そこには何も書かれていなかった。
しかし、人がいる気配はするから私はインターホンを押した。
「こんにちは、お隣に引っ越してきたという者です」
『こんにちは、今、行きます』