第9章 心の奥にあるものは? トレイ・クローバー
男らしい低い声が聞こえてきた瞬間、なんだか胸を不安が塗りつぶしていった。
ガチャ、と扉が開く音がして、そこから出てきたのは私のよく知る緑色の髪の人だった。
「あっ、あなたは…トレイ…・クローバー…」
驚きと恐怖で身体が硬直し、手から手土産を落としてしまう。
「久しぶりだな、」
この微笑み。
片眉と口端をつりあげて、嘲笑するような_
ストーカーされていた日々に、夜の薄暗い中でぼんやりと浮かんでいた表情そのものだった。
「あ…あ…」
私はとんでもない所に引っ越してきてしまった。
トレイは腰を折って地面に落ちた手土産を拾い上げる。
「わざわざ俺の元に来てくれるとは思ってもなかったな、やっぱり俺に会いたかったんだろ?」
すごい勢いで手首を掴まれ、思わず顔を歪めた。
「嫌…ち、違う…誰か…!」
叫ぼうとした矢先、口を大きな手のひらで覆われる。