第22章 柵
とある田舎の街に買い出しに来ていたシズクは、偶然見知った姿を発見した。
……えっ…あの後ろ姿ってまさか…
街の裏通りへ抜けて行く忍装束の人物が二人、片方は確かにサスケの姿だった。
考えている暇はない。シズクはすぐに駆け寄った。
「サスケ!」
突然街中で名を呼ばれ彼は少し驚いたように振り向いたが、シズクを見るなり状況を瞬時に察して共にいた仲間に短く告げた。
「…カブト、先に帰ってろ」
「……何だって?君はどうするの」
連れの男は驚いて苛立たしげに聞き返す。こちらをちらりと見やってサスケは続けた。
「俺は少し話をしてから戻る。いいから早く帰れ」
「…ハイハイ、命令口調だね。君にはそんなに自由が与えられているのかい?」
サスケはその問いに答える気はなさそうだ。カブトという忍のほうを見ようともしない。
「さすが、大蛇丸様のお気に入りだね」
肩をすくめやれやれといった仕草をして、カブトは皮肉を言い去って行った。
「ごめんなさい…大丈夫だった?」
やや険悪なやり取りに不安になって謝ったが、サスケは気にしていない様子だ。
「…場所を変えるぞ」
ついて来い、という風にちらりと目線を寄越した後、彼は先に歩き出す。
街の茶屋に移動し軒先の腰掛けに座る。野点傘の置かれたいかにも茶店らしい佇まいだ。
「今店に入ってきた人カッコ良かったー」
町娘達が興奮気味に囁き合って店から出てくる。
丁度お茶を買いに行ったからきっとサスケのことだろう。整った容姿とクールな立ち居振舞いは相変わらずで、今は更に近寄り難い雰囲気を纏った危険な魅力がある。
戻った彼にお礼を言うと、サスケは改めて調子を窺うようにシズクを見つめてきた。
「…大荷物だな」
「今日は買い出しに来てたの」
これはシズクの仕事の一つだし、飛んで帰るので問題はない。そう思ったところで気がついた。荷物があるから、立ち話じゃなくわざわざ移動して座らせてくれたのだと。
そんな気遣いが出来るのに何故…と、これまでを振り返り戸惑わざるを得ない。再会した際の重苦しい冷たい空気。所作や言葉の端々からピリピリと伝わる威圧感。