第22章 柵
「じゃあ聞くが、お前と楽しく過ごしていたら俺はイタチに勝てるようになるのか?」
何も言い返せない。
感じたのはただひたすら、見据えている場所が違うということ。
「本来の進むべき道に戻っただけだ。今までの道程は道草だった訳だ」
サスケの目的、生きる意味を再確認させられ、彼が何者かを改めて痛感した。
…でも、だったらどうして…
震える体を自ら押さえつけてシズクは声を絞り出す。
「じゃあ…どうして会いたかった、なんて言ったの?どうして…あんな風に、抱きしめたりしたの…」
「…俺は嫌なら逃げろと言ったはずだ」
あの時は気遣いから言ってくれたのだと思っていた。今はこちらの一切を突き放すように聞こえた。
「俺の気分や都合に振り回されたくなかったら、俺に近付くな」
いっそ清々しいほど簡潔に、丁寧に表現された拒絶。淋しいなんてものじゃなく絶望に近い思いが胸の中に広がっていく。
サスケの目的を考えれば楽しい時間など邪魔なだけ。彼は復讐以外の全てを切り捨てようとしていた。いや、そうせざるを得ないのだ。何となく願っていれば叶うようなものではないから。
俯いたシズクは、膝に落ちる水滴で自分が泣いていることに気付いた。隣で席を立つ気配がする。
「お前は本当は解ってるはずだな?俺を煩わせるな」
淡々と言い捨ててサスケはそのまま立ち去っていった。
…サスケは、イタチ様に復讐すれば本当に救われるの?全て断ち切って成し遂げたとして、その後に何が残るの…?
彼の目指す復讐の末に何があるのか、シズクには到底解らなかった。
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