第20章 仇討ち
月の里で独りになり、絶望の中うずくまって泣いていたシズクの前に現れて髪を撫でてくれた、あの時と同じように。
「…イタチ様」
「何だ」
「あたしに…稽古をつけてくれませんか」
彼の言いたい事は解っている。自分を大事にしてくれている事も。
でも今は頭がぐちゃぐちゃで、体を動かしていないとどうにかなりそうだった。アジトの外に出て、しばらくの間鬱憤を晴らすように体を動かした。
「そろそろ…この辺で切り上げよう」
「ありがとうございました…」
全ては…あたしが未熟で弱いから。だからこんな結末になっている。
「もっと…強くなりたい…っ」
涙が溢れ出す。気付けばイタチの胸に飛び込んでいた。
手合わせした疲れで力の入らない腕を伸ばし、必死にすがり付く。倒れそうになったところを彼に支えられたが、どうやら体力の限界でそのまますうっと眠ってしまった。
イタチは無言でシズクを抱きかかえると、寝室に向かい床に寝かせた。指先で涙を優しく拭い取りそっと囁き掛ける。
「…まだまだだ、お前も……サスケも」
翌朝、やや寝坊してしまったシズクは慌てて飛び起き支度を整える。
台所には手鍋がかかっていて、傍らにイタチが立っていた。シズクの代わりに朝食の用意をしてくれている彼に、家族のような安心感を抱いた。
「…イタチ様…」
「…起きたか」
「鬼鮫さんは?」
「私用で早くに出掛けた」
昨夜はぐったりと疲れて眠っていたため、気分はすっきりしていた。本当にイタチには助けられてばかりだ。
「今日は俺も出掛ける。お前も一緒に来い」
「…はい!」
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