第19章 密会
復讐に全て費やす人生が正しいのかどうか。人として良い人生を送れたと言えるのか。そんなもの果たしても無意味なのではないか……こんな風に思うのは、サスケの変化が余程ショックで、自分も変わってしまうかもしれない未来が怖いからだ。
一体どうすれば正解なのだろう。そして、サスケのために何か出来ることはあるだろうか…
湖のほとりから少し離れた木陰で思案していたシズクの元にサスケがやって来る。修業がひと区切りついたらしく、湖で汗を流しこちらで休憩をするつもりのようだ。
「…あ、血が…」
サスケが服を羽織った際に、腕の傷口から血が垂れてきているのが見えた。修行中誤って自身で傷つけてしまったらしい。
携帯している医療品で簡易的な処置を施す。その間彼はされるがまま静かにしていたが、処置が大体終わると低く告げてきた。
「…もういい、大丈夫だ」
「だめ」
ちゃんと傷口を塞がないと雑菌が入る。そう思って包帯を巻こうとすると、突然肩を強く押され突き放された。
「っ…」
「手当てされていたら人と会っていた事がばれる」
抑揚のない声で説明され、その理由にシズクは大人しく引き下がった。密会をしている身で深く立ち入ることなど許されない。だが拒絶は少なからず寂しかった。
自分を簡単に払いのけてくる手が、本当にサスケのものなのか未だに信じ難い。何も言い返せず、妙に息苦しい沈黙が落ちる。
すると、シズクの胸中を察してくれたのか沈黙が気まずかったのかは分からないが、サスケがおもむろに口を開いた。
「まだ今は時が満ちていない…だが」
先程突き放して出来た距離を埋めるようにシズクの腕を取りぐいと引き寄せる。そのまま真っ直ぐにこちらを見据えて続けた。
「俺は…いつか必ずお前を取り返す」
きっぱりと放たれた言葉の後、その唇がシズクの唇に押し当てられた。
「…ん…っ」