第18章 再会
吐き捨てるように冷ややかに告げられシズクは胸を突く悲しみに目を伏せた。サスケの言い分はもっともで、自分の言動には根拠がない。
それでも、イタチの事だけは信じたい。曲げられない、折れたくない。
サスケも兄弟なら分かるはず、どこかでそう思っていた。
しかし今、目の前の冷たい視線を向けてくる彼には何を言っても届かないのかもしれない。
…サスケは復讐のためだけに生きてきてしまっているから。
復讐のために生きてきた。おそらく姿を見られなかった今までの期間も。その目標を糧に進んで来たはずだ。
自分の目的を達成するためなら、他の感情を切り捨てる心を持ってしまっている。そのくらい心血を注がなければ、全うすることが出来ないから。
憎むとは、きっとそういう事だ。
「どうしても退かないのなら、あたしはサスケを全力で止める」
シズクは顔を上げ、自分の中にある決意を伝えた。
「…あなたに殺されても」
シズクの瞳に静かな、しかし揺るがぬ意志を見て取ったのか、サスケはおもむろに視線を逸らした。
「お前をあいつに渡すのだけは…許せない」
目線をはずし外に向けたまま独り言のように続ける。
「あいつは、何もかも俺から奪った。家族、一族、未来、希望……そして、お前までも…」
その声に悲しみが混じる。彼は自身の手のひらを静かに見つめた。
「俺の手には何も残らない」
「それは違うわ」
胸を引き裂かれる思いがしてシズクは必死に反論した。
「あたしはイタチ様の部下…イタチ様の手足となって働く。でも、心まではイタチ様にも奪えない。あたしの心は…」
…とっくに、サスケに奪われているのに。
そう伝えたいのに声が出ない。その言葉の意味、それがもたらす重みを考えると簡単には言えなかった。
「…お前が譲れないのと同じように、俺も譲れない」
結論がこうなる事を解っていたようにサスケは静かに首を振った。