第18章 再会
うわ言めいて繰り返される声。シズクの存在を確認するように強く回される腕。実際シズクも夢を見ているかのような気分だったが、声も腕も唇もどれも本物の彼のものだった。
…サスケ、背が伸びた。肩も腕も逞しくなった。
月日が経って男らしく成長した様を感じ気恥ずかしさに胸が鳴る。そしてその反面、あの威圧的な冷たい空気は何だったのだろうと、昔には感じられなかった雰囲気に頭が混乱する。
彼の腕の中でシズクは偶然の再会の喜びと一抹の不安を味わっていた。
サスケが湖で汗を流している間、シズクは川の上流域で水を汲んで来た。ここは綺麗な自然に囲まれているが、主要な町付近ではないため民間人は寄りつかない。身を隠して過ごすにはうってつけの場所だ。
服を着替え終えたサスケは戻って来たシズクに歩み寄り、早速触れて欲しくない話題を突き付けてくる。
「シズク…イタチの元に俺を案内しろ」
再会を喜びはしたが、やはりその話になってしまうのかと思うとここに来てしまった事を後悔したくなる。
「…アジトの場所は、教えられない」
「…お前……」
シズクがきっぱりと断るとサスケの表情が険しくなった。
「あいつは…イタチは犯罪者だ。一族を虐殺した裏切り者で、肉親をその手にかけた極悪人だ!目を覚ませ!」
「違う!」
「どう違うんだ!」
「イタチ様はそんな人じゃない…」
そんな人じゃないよ…ただ非道なだけなら、何故あたしを助けたの?
理由が…うちは一族の事件に関しては、絶対何か理由があるはず…
彼の時折見せる穏やかな微笑みや厳しくも優しく諭された教えの数々、それらが偽物とは到底思えなかった。
「心の優しい人だもの…理由もなく殺戮しただけなんておかしい。事情があったんだと思う」
「親も一族も殺していい事情とは一体何だ」
「それは…」
それが何かは分からないし、そんな事は本来まかり通ってはならない。思わず言葉に詰まる。
「そんな事情あってたまるか…あいつを庇うのはもうやめろ」