第17章 来客
「サソリを……倒さなきゃ…」
震える拳をもう片方の手で押さえ、足もそぞろにふらふらと歩き出す。そこでデイダラに肩をがっと掴まれ歩みが止まった。
「…解ってんだろ、無駄だ」
彼は静かな口調で淡々と続ける。
「旦那は強ェぜ、お前なんかひとひねりであの世行きだ」
そんな事は解っているが、じゃあこの思いをどうしろと言うのか?煮えたぎる憎しみと穴のあいた悲しみ、自分だけが生き残った申し訳なさ、何も変えられない不甲斐なさ…。見ないようにすることは出来ても、完全に消し去ることはいつになっても出来なかった。
「途中から急に無愛想になったと思ってたが…割と本気みたいだな、うん」
彼はシズクの思い詰めた顔つきを見て察したようだ。それでも、自分達の乗ってきた鳥を指して低い声で指示してくる。
「とりあえず荷物を離すな。そしてさっさと乗れ。オイラ達は買い出しに来たんだ」
「…一人で…帰れます…」
「いいから乗れよ。旦那に会う前に消し炭にされたいか?」
あまり逆らうとここで消す、とでも言いたげにデイダラは苛立たしさをあらわにする。
「……なんで…あなたには関係ないでしょ…」
「話聞いてたか、うん?お前じゃ旦那に触れることすら出来ないぜ?それで仇討ちしたと言えるかよ、くだらねえ」
サソリもこの人も強い…
最初に会った時から明らかな次元の違いを感じた。
解ってる。けど、手の届くところに仇がいるのに、生き残ったあたしが何もしない訳にはいかない。
「…お前イタチの部下だろ、そんなんでいいのか?まあ確かにオイラには関係ねえけど」
使命にも似た思いに駆られるなか、その呆れた声色にはっと我に返った。イタチ…彼にだけは迷惑はかけられない。